【書評・要約】仮説思考

記事更新日: 2021/05/21

ライター: 坂本 真梨絵

この記事を書いた人

坂本 真梨絵JobTier編集長

慶應義塾大学卒、ベンチャー企業で人事を4年経験。120社以上の転職サービス担当者と接点を持ち、400名以上のキャリア相談を担当。現在はLinkedInを活用したソーシャルリクルーティングを推進しています。

今回は「仮説思考」を要約していきます。

仮説思考とは「まず物事の答えから考える」という思考法のこと。

マリエ

この仮説思考、仕事が早い人は必ずと言って良いほど身につけているんです。

 

仕事のスピードが遅いと言われる・・そんな悩みを持つ人にはぜひ読んでほしい一冊です!

最初に仮説を立てるってどういうこと?

具体的にどうやって考えていけばいいの?

そんな疑問もこの本で全て解決できます。

マリエ

私なりに分かりやすく要点をまとめてみたので、参考にしていただければと思います!

「仮説思考」の内容要約

仮説思考とは「まず物事の答えから考える」という思考法のこと。

もし、皆さんが課題や目標に向けて行動するとき、最初に何をするでしょうか?

マリエ

多くの人はまず情報収集から始めちゃうのではないかなと思います。

たくさんの情報を集め、その情報を分析して策を考える、そんな流れではないでしょうか?

これは網羅思考と言って、一般的に人はこの思考で考えがちと言われています。

マリエ

この方法、やったことがある方は分かると思いますが・・すごく時間がかかりますよね。

多くの情報を集めることにも時間がかかりますし、集めたデータを分析するのも大変です。

データが多すぎて何をどう分析すればいいか分からなくなってしまうことも・・。

そのため本書では、

徹底的に情報を集めて答えを出すには無理がある

選択肢は多いと悩んでしまう。情報は集めるよりも捨てることが大事

だと言っています。

マリエ

そこで代替策として提示されたのが「仮説思考」です。

仮説思考の大まかな流れはこんな感じ。

  • 最初に「課題の原因(解決策)は◯◯だろう」と答えの仮説を立て、
  • その仮説を立証するためのデータを集めて検証をする。

この流れで行うと、「必要なデータだけ」を集め、「必要な分析だけ」を行うため、スピード感がまるで違います。

マリエ

情報の洪水に飲み込まれず、課題に向かって着実に進む、それが仮説思考です。

「仮説思考」がおすすめな人

本書はこんな人におすすめです。

おすすめの人
  • 仕事のスピードを早めたい人
  • 無駄なことをしたくない人

こんなの当たり前!と言う人もいるほど、基礎的かつ効果的な方法です。

特に学生や入社したばかりの会社員は知っておいた方がいいのではないかなと思います。

マリエ

仕事のスピードや効率化に悩んでいる人は、ぜひ取り入れてみてください。

「仮説思考」の3分割要約

マリエ

では早速、中身の詳細を見ていきましょう!

仮説思考を実際に活用していけるよう、本書の内容を以下3点に分割してまとめています。

  • 仮説思考のメリット
  • 仮説思考の進め方
  • 仮説思考の立て方とポイント

仮説思考のメリット

仮説思考のメリットはたくさんありますが、私が思うメリットを2つご紹介します。

1つ目は「意思決定が早くなり、仕事の効率が上がる」ことです。

仮説思考を用いることで、網羅的に情報を調べるよりも圧倒的に早く行動することができます。

マリエ

情報を集めたけど、その後どうすればいいのか分からない・・という経験をした方は多いのではないでしょうか?

仮説思考では「どんな原因なのか」を具体的に考えるため、その後に何を調べればいいのか、何を検証すればいいかに迷いません。

次の行動に迷いがないのは、仕事の効率を上げるうえで大事な要素です。

マリエ

迷っている時間があれば行動!それができるようになるのは嬉しいですよね。

2つ目は「問題解決の思考が身に付く」です。

何かの問題に直面したとき、どうすればいいか分からなくて途方に暮れることってありませんか?

マリエ

何か行動しなきゃと思っていても、何をすればいいか分からない・・あの時間って本当にもったいないですよね。

仮説思考が身に付くと、問題を解決するプロセスや思考が自然とできるようになります。

問題の大小の違いはあれど、解決のためにやるべきことは一緒。

マリエ

何か問題に直面しても慌てずに対処策を練ることができる。

これも仮説思考の大きなメリットだと思います。

仮説思考の進め方

ではさっそく仮説思考の進め方を見ていきましょう!

  • 解決すべき問題を明確にする。
  • 「その問題の原因は何か」の仮説を立てる。(問題発見の仮説)
  • 問題発見の仮説を検証する。
  • 3.で立証できた仮説から、「どうすれば解決できるか」の仮説を立てる。(問題解決の仮説)
  • 問題解決の仮説を検証する。

検証で自分が立てた仮説がどれも立証できなかった場合は、別の仮説を立てて再度検証します。

こうして見ると進め方はすごくシンプルで、仮説と検証をとにかく繰り返しているということが分かりますね。

マリエ

より進め方を理解するために、具体的な例でイメージしてみましょう!

Aさんは人事部に所属する社員です。

Aさんの会社では離職率の高さが問題になっており、この原因と解決策を仮説思考で考えることにしました。(1. 解決すべき問題の明確化)

まず離職者のデータと毎年の従業員満足度調査の結果を確認したところ、離職者は若い社員が多く、また会社への満足度も若い社員の方が低いということに気づきました。

このことからAさんは、「若い社員がやりがいのある仕事ができていない」「若い社員の勤務時間と報酬が釣り合っていない」という仮説を立てました。(2. 問題発見の仮説を立てる)

自分が立てた仮説を検証するため、従業員満足度調査の結果の分析、社員の残業時間、そして競合他社における同年代の人材の報酬はどのくらいなのかを調査し、分析しました。(3. 問題発見の仮説の検証

調査の結果、仕事内容にやりがいは持っており、報酬も競合と比較すると差はないということが分かりました。

しかし、残業時間が競合よりもずっと多いことが分かりました。

マリエ

ここまでが、進め方の1~3の部分です。

解決すべき問題を明確にし、まずその問題の原因は何か?の仮説を立てます。

今回は既に手元にある「離職者のデータ」「顧客満足度調査」から2つの仮説を立て、その仮説を立証するための検証を行いました。

その検証の結果、「残業時間」がどうやら原因のようだという結論に至っています。

マリエ

では続いて4以降のステップを見ていきましょう。

Aさんは「若い社員の残業時間が長いこと」ことが離職の原因だと仮定し、その問題を解決するにはどうしたらいいのかを考えました。

なぜ残業をしているのかを若い社員にヒアリングをした際、「仕事量が多くて終わらない」「日中は電話対応や雑務に追われていて、自分の仕事ができない」といった声が上げれらました。

そこでAさんは、「若い社員のデスクワーク量を減らせば、残業時間が減る」という仮説を立てました。(4. 問題解決の仮説の設定

この仮説を検証するため、派遣社員を雇ってもらい、簡単な雑務を代わりにやってもらえるよう依頼をしました。5. 問題解決の仮説の検証)

マリエ

「どうすればその問題が解決するのか」の仮説設定・検証の場面です。

ヒアリングをして残業の原因は何かを聞き出し、それに対して解決策の仮説を設定しています。

これが問題解決の仮説です。

問題解決の仮説ができれば、あとは同じように検証するだけです。

マリエ

あくまで例のため、実際の会社では難しい場面もあるかもしれませんが・・仮説思考の流れは理解いただけたでしょうか?

思考の流れが分かればあとはその流れに沿って実践するだけです!

仮説の立て方

仮説思考の進め方は分かったけど・・実際仮説を立てるのって難しそう・・。

そう思う方もいるかと思います。

そんな方のために、本書で解説されている、仮説を立てる際の基本的な作成方法やよりいい仮説を立てるための考え方をまとめます。

マリエ

まずは基本的な仮説の立て方から解説していきます。

まず仮説の基本的な作り方のポイント1つ目は、仮説は「今手元にある情報で」立てることです。

マリエ

情報を集めてからじゃないと仮説が立てられない!という人は、結局情報の海に溺れてしまうでしょう。

2つ目は、仮説を立てる際はなるべく具体的な仮説を立てること。

具体的な仮説を立てないと、どうやって検証すればいいのか、どんな情報を集めればいいのかなどが分からず、動けなくなってしまいます。

マリエ

より具体的に、どんなアクションをするかまで落とし込みましょう。

そして3つ目は、「仮説は多くても3つに絞ること」です。

仮説は立てようと思うと無限に立てることができます。

マリエ

そうすると結局調べることが多くなり、仮説思考の意味がなくなってしまいます。

基本的な作成方法はこのような感じです。

では次に、いい仮説を立てるための考え方をご紹介します。

まず反対側の視点とは、「顧客の視点」「現場の視点」「競合の視点」の3つの視点を指します。

自分が顧客だったらどう考えるか?

社内の課題であれば、自分が企画した施策を現場の人間はどう考えるのか?

そして競合は自分たちの会社をどう見るのか?

マリエ

これら3つの客観的な視点を持つことで、独りよがりにならない仮説を立てることができます。

次の両極端な視点とは、極端に振って考えてみること

これは今までなかったひらめきを生み出すための考え方です。

例えば自分の業務を効率化したい時、思い切って「この業務はなくしてもいいのでは?」と考えてみます。

検証の結果、その業務はなくしてもいいということであれば大幅な効率化に繋がり、もしその業務がなくしてはいけないものであっても、自分の業務の価値を再確認することができます。

マリエ

この方法、思考が偏りがちの人は特に効果的だと思います!

最後はゼロベース思考することです。

ゼロベース思考とは、前提知識や思い込みをなくし、基礎(ベース)を一旦ゼロにして物事を考える思考法のこと。

私たちは自分の経験や過去の事例など、あらゆるものを前提として様々な決断を下しています。

マリエ

しかし、時にはその経験や事例が、新しいアイデアを生み出すことを阻む壁になってしまうことがあります。

例えば、コロナがきっかけでリモートワークやテレワークも一気に広まりましたよね。

なぜ今までこの考えが広まらなかったのかというと、「仕事は出勤するもの」という固定概念があったからです。

マリエ

ゼロベースで考えることで、今までの枠から外れた新しい仮説を生み出すことに繋がります。

「仮説思考」の実践でつまづくポイント

仮説思考のメリット、そしてどうやって考えればいいのかをまとめました。

しかし、「知っている」のと「やってできる」のは全く違いますよね。

マリエ

そこで、実践した際につまづきそうなポイントを解説していこうと思います!

他の可能性への目移り

仮説思考では、仮説に沿って、収集する情報を絞ることが大事、というのは既にお話しましたね。

マリエ

しかしいざやってみようとすると、きっとこんな考えが頭をよぎると思います。

「あれっ・・そういえば他にもこんな可能性があるな・・。」

そして不安になり、立てた仮説と関係ない情報を調べ始め、結局情報収集や調べ物に多くの時間を費やしてしまう・・。

マリエ

これ、実は私の実体験です・・。

しかし、思いついた可能性を調べ始めてしまうと、仮説思考のメリットである「意思決定の早さ」がなくなってしまいます。

そのため、途中で違う可能性に気づいた時は、思い切って一旦角に置いておきましょう。

マリエ

「仮説を立てる→検証」

このサイクルを繰り返すことが重要です。

ゼロベースで考える

仮説の考え方で、「ゼロベースで考える」というポイントがありました。

ゼロベースってよく聞きますが、実際やろうとすると難しいですよね・・。

マリエ

結局は今までと同じような仮説しか思いつかない・・そう悩む人も多いと思います。

ではどんな考え方がゼロベースなのか?例を用いて考えてみましょう。

あなたは会社の経費削減のミッションを持っています。

ミッション達成に向けて業務に励むなか、上司から「経費でかかっている交通費を80%削減する」という目標を提示されました。

あなたならどんな施策を提案しますか?

通勤ルートの最適化・・飛行機はLCCを使う・・営業のタクシー移動を制限する・・

マリエ

でもこれらの案で80%削減は難しそうです・・。

ゼロベース思考で考えると、このようになります。

そもそもなぜ交通費がかかっているのか?

→遠方のお客さんとの商談が多く、交通費がかかっている

では直接訪問しなくてもいいよう、webのツールで商談ができないか?

マリエ

先ほどとは全く違う案が出てきましたね。

「営業は顧客に直接訪問するべき」「webでの商談は難しい」という従来の考えから抜け出せていない状態での案です。

ゼロベースで思考するには、今までの事例や慣習を全てゼロにする必要があります。

マリエ

私がゼロベース思考をする際は、現実味がないような意見であってもとりあえず書き出すようにしています。

自分の頭の中で考えるだけでなく、紙に書き出したり、色々な人と相談したり、アウトプットをすることでより考えが洗練されていきます。

マリエ

ゼロベース思考で悩んでいる人は参考にしてみてください。

「仮説思考」の書評

マリエ

私は本書を読み、この仮説思考を使うときに重要なのは「失敗は当然だと考える」ことだと感じました。

仮説思考は「仮説を立てる→検証する」の繰り返しを前提としています。

そのため、仮説が間違っていた、効果が思うように出なかった、という結果が出ることが当然なんです。

マリエ

むしろ最初に立てた仮説が正解という方が少ないと思います。

「失敗したくない」「間違えたくない」そう考えると、どうしても慎重になってしまい、意思決定が遅くなりますよね。

マリエ

「この仮説は違ったのか!これならどうだ!」とどんどんサイクルを回していく方が、より早く効果が出ると私は思います。

もちろん、なるべく正解であろう仮説を考え抜くことは大事ですが、「正解」だけに固執して行動ができないのは本末転倒

失敗を恐れず、思考と行動を止めない人が、仕事ができる人と見られるのかなと思いました。

この記事を読んで気になった方はぜひ本書を手にとってみてくださいね。

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